
テクニカル分析が「過去の値動き」から未来を予測するのに対し、
ファンダメンタルズ分析は、“経済の本質”から相場を読み解く力です。
この章では、FXで重要な「ファンダメンタルズ分析」の基礎と、必ず押さえておきたい三大経済指標を中心に解説します。
1. ファンダメンタルズ分析とは?
ファンダメンタルズ分析とは、通貨の価値に影響を与える経済的・政治的要因を分析する手法です。
主に以下のような要素が関係します
• 金利政策(中央銀行の方針)
• 経済指標(雇用、物価、GDPなど)
• 政治的な安定性
• 国際情勢(戦争・紛争・地政学的リスク)
📌 これらを把握することで、「今後どの通貨が買われそうか/売られそうか」を予測できます。
2. 絶対にチェックすべき“3大経済指標”

ファンダメンタルズの中でも、特にFXに大きなインパクトを与える「三大経済指標」を紹介します。
✅ ① 雇用統計(米・Nonfarm Payrolls)
• 発表タイミング:毎月第1金曜日、日本時間22:30(夏時間は21:30)
• 内容:米国の非農業部門の雇用者数の増減
• 重要性:★★★(最大級)
アメリカの雇用状況は、そのまま経済の健康状態=ドルの強さを表します。
雇用者数が大きく増えていれば、景気が良い→利上げの可能性→ドル買いとなりやすい。
逆に、雇用が減れば利下げの思惑→ドル売りに傾きます。
✅ ② 消費者物価指数(CPI)
• 発表タイミング:月1回、国によって異なる(米国は月中旬)
• 内容:一般消費者が購入する物価の変動(インフレの指標)
• 重要性:★★★
インフレ率を測る最も重要な経済指標。
インフレが高い=物価上昇 → 中央銀行は金利を上げる可能性が高まる(通貨高要因)
逆にインフレが鈍化すれば、利下げの期待→通貨安要因になる。
📌 特に米国CPIはドル相場全体に大きな影響を与えるので注目必須!
✅ ③ 政策金利(FOMC/各国中銀)
• 発表タイミング:定期会合(月1〜2回)
• 内容:中央銀行による金利政策の決定
• 重要性:★★★
金利は通貨の価値そのものを左右する要素です。
高金利通貨は買われやすく、低金利通貨は売られやすい傾向があります。
例えば、アメリカのFRB(連邦準備制度理事会)が利上げを決定すると、ドル買いが強まるのが一般的です。
3. 経済指標の読み方・注意点
ファンダメンタルズ分析において大切なのは、
「結果だけでなく、市場の予想とのギャップ」
を見ることです。
発表結果 | 市場予想 | 為替への影響 |
---|---|---|
結果が予想より良い | 期待以上の景気回復 | 通貨高になりやすい |
結果が予想以下 | 景気悪化の懸念 | 通貨安になりやすい |
📌 「予想通りでも値動きがある」場合もあります。
それは、すでに市場が“織り込み済み”だった可能性があるからです。
4. 三大経済指標と主要通貨ペアの値動き傾向
以下に、「市場予想より良い or 悪い結果が出た場合」に、
主要な通貨ペアがどういった動きをするかをまとめました。
4-1. 雇用統計(Nonfarm Payrolls / NFP)
注目通貨ペア:USD/JPY、EUR/USD、GBP/USD など
指標結果 | USD/JPY | EUR/USD | GBP/USD |
---|---|---|---|
予想より良い (雇用増) | ドル買い →上昇(ロング) | ドル買い →下落(ショート) | ドル買い→ 下落(ショート) |
予想より悪い (雇用減) | ドル売り →下落(ショート) | ドル売り →上昇(ロング) | ドル売り →上昇(ロング) |
📌 米国の雇用統計は「米ドルの強弱」に直結。
良い結果なら米ドルが買われ、USD/JPYは上昇しやすく、EUR/USD・GBP/USDは下落しやすい傾向にあります。
4-2. 消費者物価指数(CPI)
注目通貨ペア:USD/JPY、EUR/USD、AUD/USD など
指標結果 | USD/JPY | EUR/USD | AUD/USD |
---|---|---|---|
予想より高い (インフレ加速) | ドル買い → 上昇(ロング) | ドル買い → 下落(ショート) | ドル買い → 下落(ショート) |
予想より低い (インフレ鈍化) | ドル売り → 下落(ショート) | ドル売り → 上昇(ロング) | ドル売り → 上昇(ロング) |
📌 CPIの結果はFRBの利上げ・利下げ判断に強く影響します。
CPIが予想を上回ると、「利上げ継続→ドル買い」の連想で米ドルが買われやすくなります。
4-3. 政策金利(FOMC・ECB・BOE など)
注目通貨ペア:USD/JPY、EUR/USD、GBP/USD など
金利決定 | USD/JPY | EUR/USD | GBP/USD |
---|---|---|---|
利上げ (予想通りorサプライズ) | ドル買い → 上昇(ロング) | ドル買い → 下落(ショート) | ドル買い → 下落(ショート) |
利下げ (予想通りorサプライズ) | ドル売り → 下落(ショート) | ドル売り → 上昇(ロング) | ドル売り → 上昇(ロング) |
📌 政策金利は「事前の市場予想とのギャップ」によって値動きが大きくなります。
利上げ予想→据え置き=ドル売り、という逆の動きが出る場合もあるので、声明文やパウエル議長の発言なども要チェックです。
4-4. クロス円(例:EUR/JPY・GBP/JPYなど)の動きはどうなる?
米ドルが買われると、リスクオン相場になることが多く、クロス円(EUR/JPY・GBP/JPYなど)も連れ高(ロング)になる傾向があります。
ただし、欧州や英国の独自の指標(ECB政策金利、英CPIなど)がある場合は、それに引っ張られるケースもあるため注意が必要です。
✅ 三大指標ごとの主要通貨ペアの方向性早見表
指標 | 内容 | 結果が良ければ… | 通貨の反応 | 通貨ペア例 |
---|---|---|---|---|
雇用統計 | 米国の雇用状況 | 米景気が良い | 米ドル買い (ロング) | USD/JPY 上昇、EUR/USD 下落 |
CPI | インフレ状況 | 利上げ継続の思惑 | 米ドル買い (ロング) | USD/JPY 上昇、AUD/USD 下落 |
政策金利 | 利上げ・利下げ判断 | 金利上昇期待 | 米ドル買い (ロング) | USD/JPY 上昇、GBP/USD 下落 |
このように、ファンダメンタルズ指標は「予想との乖離」によって相場を大きく動かす要因となります。
値動きの傾向を押さえておくだけでも、ポジションの取り方・リスク管理に大きな差がつくでしょう。
5. ファンダメンタルズの活かし方:初心者向け実践法

初心者のうちは、すべてを読み解こうとする必要はありません。
まずは以下のポイントからスタートしましょう。
✅ 初心者の実践ポイント
経済カレンダーをチェックする習慣をつける
→「指標発表前後はトレードしない」だけでもリスクを大きく下げられる
三大指標の“前後の動き”を観察してみる
→ 雇用統計やCPI後の値動きをチャートで確認するだけでOK
重要指標発表前後は、ポジションを減らす・控える
→ スプレッドの拡大や乱高下に巻き込まれるのを防ぐ
6. コピートレードにおけるファンダメンタルズの見方
コピートレードをしている場合でも、指標の前後の値動きは注視すべきです。
• フォローしているトレーダーが指標トレード型か、避けるタイプか確認しておく
• FOMCや雇用統計のタイミングでは、大きなドローダウンが出る可能性がある
• 指標発表前後だけは、ポジション状況をチェックする習慣を
📌 「完全放置」はリスクになることもあるため、“経済イベントのタイミング”だけは最低限把握しておきましょう。
まとめ|経済指標を意識するだけで、トレードは大きく変わる
ポイント | 内容 |
---|---|
ファンダメンタルズとは? | 経済・政治の動向で通貨の価値を分析する手法 |
三大指標 | 雇用統計、CPI、政策金利(FOMCなど) |
初心者向けの活用法 | カレンダーのチェック、指標後の観察、ポジション調整 |
コピトレ利用者も要注意 | 指標で大きく損益が動くケースがある |
📌 テクニカルとファンダメンタルズは、どちらか片方だけでは不十分です。
両方をバランスよく使うことで、より“精度の高いトレード判断”ができるようになります。